薄紅の月

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暖かく、紅く輝く秋の月が、オレは今でも好きだ。



幼い頃、自分の背丈より高いススキの海をかきわけて、一番近くで月を見る事が出来る場所まで、よく3人で行ったものだ。

ススキの海にポツンと立つ古木に上って見る月は、視界いっぱいに広がり、両側に座る見慣れた顔を優しく照らす。
両側の顔は面白い事に同じように口を開け、かなり間抜けな表情で月を見上げていたので、つい吹き出しそうになってしまったのだが…
自分も同じ顔をして月を見ていたような気がしたので、軽く自分の口元に手をあて、ニヤけそうな頬をなんとか落ちつかせた。
そして何事も無かったようにまた夜空を仰いだ。

秋の風がススキを揺らし、そのざわめきとコオロギ達の奏でる音色がなんとも心地良くて、古木の枝で眠りこける時もたまにあった。オレはほとんど無かったけど。
オレの左右に座ってた人達が、いつの間にかススキの海で溺れていた時はさすがに堪えきれず、大声で笑ったな。


風情も何も無い月見だったけど、オレはそんな時間が好きでたまらなかった。






今はもう、月の光さえあの日のように見ることは出来ないけれど……






「この間さ、昔よく行ってたススキの野原に似た場所を見付けたんだよ。また3人で行ってみないか?今度は酒でも持って、木の上で月見酒といこうぜ。な、ウツキ」

「おまえとライカは月よりも酒の方が重要なんだろ。酔っ払って枝から落ちて、ススキの海で溺れてても助けてやらないからな」

「あ、なんだよ、そんな事まだ覚えてやがったのか?」

「忘れるワケないだろ。最高に面白い思い出だ。…オレの好きな酒、用意しておいてくれよ」

「はいはい。んじゃ、エンギシにライカの貸し出しでもお願いしてくるか」

「頑張って言いくるめてこいよ」




月は見えなくても、あの時と同じ風が吹いて、あの時と同じ秋の音色が聞こえる。
それだけで、あの時の風景は鮮やかに蘇ってくるんだ。



昔と変わることのない、優しく輝く紅い月は

                    今でも瞼の裏の、大好きなふたりを照らしている。

 

 

 

 

雷火の小説を色々なサイトで読む度に、自分も書いてみたいなぁと密かに思っていたのです。色々なサイトと言っても3軒くらいしか知らないですけど…(泣)

何を書こうかと考えていた時、薄暗くなってきた空にほのかに紅く輝く月を見たのを思い出して、それを題材に書いてみよう!という事になりました。主人公はウツキです。
妹が書いてくれた小説にもススキの野原が出てきますが、特に意識したワケでもなく…
どうせなら設定を合わせたほうが面白かったのかな?まぁ、これが私の世界ということで。

きちんと小説を書いたのって今回が初めてなので、かなり緊張…。
ちゃんとまとまってるのかな、コレ…。

でも、これに懲りずに、また書いてみたいです。