「グー…スピーーーー」 オタジは平和な世界の中、熊鬼山の名残もあってか森の中で昼寝をしていた。 ささやかな戦士の休息である。 そんな幸せをブチ壊すかのように彼を起こしに掛かる彼の友人達。 「オイ!オタジ!!いつまで寝てやがんだ起きやがれ!!」 乱暴な言葉遣いでオタジを起こしに掛かったのはツンツク頭の少年。名前はライカ。 「起きろよオイ!自分ばかりが幸せになってんじゃねーぞコラ!」 ライカの乱暴な口調にも耳を貸さぬ感じでノンレム睡眠をとるオタジ少年。 「てめェがその気ならこっちにも手はあるぜ」 チャッ… ライカが手にしたのは猫じゃらし。どこかの草むらから拾ってきたものである。 「ふっふっふ…」 ライカは猫じゃらしをオタジの鼻に突きつけるようにムズムズさせる。 「ふぅぁあ…」 オタジは見事に手中にハマったようだ。 「ふぇぇぇっくしょーーーーーい!!!」 オタジは見事とは言わんばかりの大きなクシャミをライカ目掛けてかます。 およそ半径3km。 「ギャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」 ライカは空の彼方へ吹き飛ばされた。 「あら?」 森から姿をひょっこり現したのは落ち着いた感じの少女。名前は壱与。 「ライカさんの悲鳴が聞こえたから何なのかと思っていたけれど…」 もちろん、壱与は飛ばされたライカの事は知る由もない。 「オタジさんがいるわ…。起きて下さい。風邪を召しますよ…」 あれだけ罵声を浴びせたライカの声でも目が覚めなかったのだ。壱与の声で目覚める事は到底ない。 「ふふ…普段は元気なのに、寝ている時は静かなものなのね…」 オタジの寝顔を見て思わず呟く壱与。 「きっとライカさんもこんな感じでいつも眠っているのね。はぁ…ライカさん…」 壱与、妄想に耽り自分の世界へまっしぐら。 「こんな所に居たかオタジ。いつまで経っても戻らなかったから迎えにきたぞ」 日が暮れ始めそうになった頃にオタジを迎えに来た少年。名前はウツキ。 「起きろ!!戦士の休息は終わりだ」 「う…ん…老師様…許してくれよ…」 「何寝言言ってんだか…起きろってば!」 ウツキはオタジを揺さぶり起こそうとする。 「…ウツキ…テメェだけ良い子ぶるんじゃねー…いっつも美味しい所はお前が…取りやがって…青二才…」 オタジの寝言。これはもちろん思い切り小さいホンで呟くような声ではあるが、聴覚の著しいウツキにとってそれはバッチリと耳に届いていた。 ブチッ!! ちゅどーーーーーーーーーーーーーーん!!! 森から何やら大爆発が起きたようである。 爆発を見てオタジがそこに居るのを知っているのを思わず駆けつけた少年が居た。名前はタキ。 「煙が出てるよ!森が火事になっているんだ。早くオタジさんを探さないと…」 タキの心配はすぐにかき消された。何故ならば思ったよりもすぐにオタジの姿を発見できたからであった。 が、 「オ…オタジ…さん???」 煙が出ていたのは森からではなく、オタジ本体からだったからだ。 ぷしゅぅぅぅぅぅぅ… 「な…なんか…オレ…悪い事でも…言った…のか…?な…んで…爆発なんか…起きやがった…ん…だ…ガク…ッ」 黒焦げの姿でタキに少しの言葉をぼやいた直後、彼は力尽きた。 「オタジさーーーん!起きてーーーーーー!!」 オタジがその後目覚める事は永久にありませんでした。合掌。 おわれ。 |
「・・・大王さまー、今度はどこに行かれたんですかーっっ、お願いですからそろろそ帰ってきてくださいーっ」 段々と近付いて来るのは、どことなくやけっぱち調子で叫んでいるエンギシの声だ。どうやら昼寝の時間はそろそろ終わりらしい。 思い思いに目をこすったり欠伸をしたりしながら起き始めた彼らに向かって、彼女は笑いながら言った。 「おはようございます、皆さんの寝顔、とても可愛かったですよ」 その直後の慌てふためいた彼らもなかなかに見ものだったが、そちらは言わないでおく。 吹き抜ける風が気持ち良くて、今度は彼女が眠たくなってきた。 「今度ここでお昼寝するときは、私にも教えてくださいね?」 三人は苦笑して頷く。 どんな夢を見てたんですか?秘密。あー、オレ、なんか変な夢みてたなあ、どんなのだっけ?・・・オレ、夢の中でまでひどい目あってたような気がすんなあ・・・。 賑やかな話し声は段々と遠ざかり、やがて聞こえなくなった。 |