彼はそれ以外に生きる術を持たなかったのだ on a multiple-choice test 彼の両親は農奴だった。 彼が14の時のこと。 おそらくもう一日遅ければ、彼はそのまま餓死していただろう。 一人が生きるのならば、一人が死ななければならない。 傲岸な眼差しに相応しい傲慢な声で男は告げ、握り飯の代わりに剣を差し出した。 殺せ。 彼は、剣を受け取った。 いやだ、助けてくれ、死にたくない。 震えて聞き取りづらい声で、兵士は懇願した。 殺せ。 もう一度、男の声が聞こえた。 その日彼は、生まれて初めて持った剣で、生まれて初めて、人を殺した。 剣から滴る赤い雫を見て、男は満足げに笑い、握り飯を手渡した。 そうだ。それで良い。お前はこれからそうやって生きるのだ。 死した両親の為か、殺した兵士の為か、先も見えない己の未来の為か。 |
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アキラさんのサイトで1111番を踏んでリクエストさせて頂いた、雷火の小説です。イキナメの子供時代のお話…私が一番読みたかったお話でもあります。 こんな素敵な作品を頂けて、物凄く感激です…! アキラさん、本当に有難う御座いました! |